日本海を抜けた台風10号が北海道に近づきつつあった。ラジオの天気予報は、夕方から北海道全域で風雨が強くなると告げていた。あたりが徐々に暗くなり始めたころ、ほんの少し風が強く吹き出した。だがさほどひどい風でもない。雨も少しは強くなったようだが、台風のそれとは思えないほどの、フツーの雨といった雰囲気だった。
パスタを茹でてソースとあえ、クラシックで流し込む。毎度のキャンプ飯で腹を満たし、寝袋にもぐりこんだ。
夜半にいちど目が覚める。風雨は夕方の時とさほど変化はなかった。その数時間後、あたりが白み始めたころに目を覚ます。あたりはしんと静まり返っていて、テントを打つ雨音も聞こえない。
台風は通り過ぎたようだ。
やがて東の空から太陽が顔を出した。水滴を飛ばそうとテントのフライシートを叩くと、飛び散った水滴が日光を受けてキラキラと光った。今日は気持ちよく走れそうだ。
ゆっくりと荷物を片付けていると、額にうっすらと汗がにじんでくる。日差しはまさに夏のそれだった。
図らずも連泊してしまったキャンプ場だったが、とても使い勝手の良い快適なキャンプ場だった。なによりも無料ってのがありがたかった。
キャンプ場を出発し、国道236から道道15号へ。道道に入ってすぐのところに”展望台”と書かれた看板が立っていた。看板に従って脇の細い山道を登っていくと、そこにはNHKのアンテナ塔があり、その隣に展望台が建っていた。
虫類を貫くまっすぐな道が、青空の下に果てしなく続いていた。遠くには雲が浮かんでいるので台風一過ってわけではないけど、コントラストの強い夏らしい景色であることは間違いがない。
道道15号を北に向けて走り、幕別から国道242号に合流する。さきほどからタコメーターがきしむ音が絶えず聞こえていて、針が大きく上下している。これでは正確な回転数を判別しようがない。ちょうど足寄の街のとっつきにホームセンターがあったので、オイルスプレーを購入してワイヤーの取付穴からメーターの内部にスプレーしてみた。針の動きは落ち着いて、きしむ音も聞こえなくなった。とりあえず旅の際中はこの方法で対処しよう(結局その後症状は悪化することはなかった)。
足寄から国道241に入り、阿寒湖方面へ。青空の下、両側を原生林に囲まれた道がまっすぐに伸びる。ついついアクセルを余計に開いてしまうが、このあたりは観光地なので獲物を狙うパトカーも多い。緊張感を保ち続けなければ。
阿寒湖畔のアイヌコタンで休憩する。昨年も寄ったお土産屋さんで手ぬぐいを購入した(じつは昨年も購入したのだが、7月のツーリングでどこかに落としてしまった)。
久々に釧路湿原が見てみたい。阿寒の街を出て、国道240号線を南下した。国道240号は道幅も広く、緩やかなコーナーが連続する気持ちのいい道なのだが、釧路へと続く国道だけあって交通量が多く、あまりペースを上げられなかった。
途中から道道にルートを変えた。両側は手付かずの原野で、昼間はいいものの、夜は走りたくないなあ。
釧路市に入り、湿原道路のとっつきに到着する。この道で釧路の街をバイパスしようかとおもったが、そこには「通行止め」と書かれた標識が置かれていた。その場でルートを変えればよかったのだが「行けるところまで行こう」と、標識を無視して湿原道路に突入した。
そして案の定、わけのわからない道を走る羽目となってしまった。しまいには産廃処理場の中に迷い込んでしまい、なんとか脇のフェンスの隙間から脱出した。その後も陸上競技場に迷い込んだりと、時間ばかりがかかって思うように距離を伸ばせない。地図を確認するために何度もバイクを止め、そしてまた迷うというくりかえし。腹も減ってきた。イライラが募る。
無駄な時間を過ごしていたら、いつの間にか正午を過ぎていた。とにかく街を離れ、まずは昼飯を食うことにしよう。ようやくバイパスを見つけて釧路の街を脱出し、湿原の東側を南北に抜ける国道391号に出ることができた。すると国道脇に、小さな洋食屋を見つけることができた。
あとで知ったけど、実はかなりの有名店みたい。
お店の名物の”ザンタレ”を頂くことにした。ザンギと呼ばれるトリからに甘酢のタレがかかっている。要するに油淋鶏なんだろうけど、とにかく量が多い。これでハーフサイズというから、フルサイズなど、今のおれには食いきれないだろうな。
飯を食い終え、再びバイクにまたがった。進路の左側に湿原の景色が広がるが、ビューポイントは未舗装路を何キロも走っていかなければならない。あまりゆっくりもしていられないので、展望台への道を少しだけ走って、なんとなくそれっぽい写真を撮って自分自身を納得させる。空には雲が増えてきた。そろそろ今宵の寝床の心配をしなければ。

湿原のそばにある塘路駅

展望台に続く未舗装路
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